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ひと針にコダワリ続けるということ。

公開日: : 最終更新日:2014/10/20 刺し子好きな一人として, 思い




雪でも舞ってしまいそうな高山から。おはようございます。
覚悟を決めてから…というか、目の前の使命に気がついた頃から、人に出会う事が多くなった。幾分のタイミングのズレもなく、必要な時に必要な人材に出会える運を味方にする事ができる様になった。今回もそんなお話。
尊敬する先輩方からの信頼を集めている、それだけで会って話がしたかったお方。東京に行けなくなってしまった僕の為に、僕なんかよりもよっぽど過密なスケジュールの間を縫って、高山まで会いにきてくれた熱い方。
会話の中の内容や、目の前の仕事は全く種類の違うものなのに、目頭が熱くなる程の情熱と思い。がっしり握り続けた手越しに見たその方の目は、僕の角膜にも焼き付いて、それはきっと僕の人生の宝物にしっかりなっていて。
一言、ひとことが重かった。
一緒に居た時間、ひたすら頭の回転数を上げて、おおっぴらに公開してくれたその方の引き出しの中身を漏らさない様に必死だった。
ジンっと痺れる様な脳の疲れの後に残ったのは、使命という大きな言葉の中に含まれる具体的な動き方で。
今迄矛盾として内包していた葛藤が、実は矛盾ではなく起爆剤だったという現実。
「危機感」という共通点が、僕らを引き寄せたのであれば、今の日本は、世界は、まさに危機感が足りない状況で。動かなければいけない…状況の中で、楽しんで動けている僕はやっぱり幸せなんだろうな…と。
今でも全速力で走っているつもりだけど、またブースターをヒトツ貸して頂けた感じ。まだまだギアがあがるんだ…。そんな僕という人間の可能性を感じさせてくれた瞬間に心から感謝しつつ。
そんな言葉では到底纏めきれない一日の中で、学んだ事。そして気づいた事。次の一手となりうること。
僕の使命として捉えている”刺し子”…という工芸は、アホみたいにコダワリが多い。
「コダワリ」と書くと、良い意味で捉える事もできるのだけど、勿論僕も良い意味で捉えて僕らの強みだと思っているのだけど、実際は日本の職人という職業程、包括的にユニークな存在は居ない訳で。
極論、趣味を市場に投入してお金を頂いてしまおう…なんて、やっぱり独特で。
「ターゲットとかマーケティングとかわかんないけど、作りたいから作っちゃいました。えへっ。」
というのが彼ら職人の原点で、でも、その”作る”という作業には絶対の自信を持っていて、その”粋”に惚れてくれた方が応援してくれるから、そういう文化を尊重してくれるから成り立つ生き方で。
下手したら単なる自己満足で終わってしまうものを、ヒトツの産業として日本各地に発祥させ、今の時代にも残せている日本人はやっぱりすげーな、と。そんな会社を40年続けてきた飛騨さしこも、やっぱりすげーんじゃないか、と。
マーケティングもセグメンテーションも、ターゲティングも、およそ一般的な製造販売業には絶対的に必要とされるビジネス要素は、無視はしないまでも、”作りたいしから作る”という弊社の絶対的なルールに比べてしまうと大事じゃないのが現実で。
僕がビジネスを勉強してきた人間だから、その要素は少しずつ浸透させている事はできているのだけど、それでも「作りたくない」作品は、形になることはない。実際、形にしちゃいけないと思うし、無理矢理形にした所で、それは販売できるレベルには仕上がってこない。
特に特注を受けた際に、職人さんの代表格である純子という職人さんと話す時に感じる事がある。仕事として頂いた以上、納期は勿論大切だし守るものなのだけど、彼女の気分が乗っていない時には彼女は刺し子をしない。本当の意味で”良いもの”を作るためには、安定した心理も必要最低条件で、その安定した心理を保つ事も職人としての仕事のヒトツ。
長年の職人歴の中で、彼女が刺すひと針には、ひと針の中に納まりきらない文化と粋がある。そう思う。
その日の手にもった布の感触。
左手と右手の間にある、まるで宙に浮いたかの様に高速で動く針の紡ぎだす針目は、ひと針ひとはり、彼女の経験と勘から生まれる、ベストの針目で。
気に入らなかったらほどいちゃうし。
たかがひと針。されどひと針。
布を補強する…という実用的な目的から始まった刺し子は、産業革命の中で一度は必要とされなくなった文化かもしれないけど、このひと針に集約された思いは、きっと日々頑張ってらっしゃる多くの方の”懐かしい、なんかあったかい感覚”を思い出させてくれる様なひと針のはずで。
刺し子のプロ…というだけで、デザインも縫製も二流かもしれないけど、ヒトツだけ共通点がある。実際僕からも言葉にしてお願いしているけど、もうわかってくれている共通認識。
「心を込める」
という事。
柔軟になることだけが正解じゃないと思う。
市場が求めているニーズに答えることだけが正解じゃないと思う。
爆発的に売れる様に上手に広告やキャンペーンを使って薄利多売を目的とした作品作りをする事や、お洒落なデザインで近代的な刺し子に挑戦する事だけが正解じゃないと思う。
勿論、上記全てが今の僕らに足りてない事で、刺し子を知ってもらって残す為には絶対的には必要な事だとは思うけれど、と同時に、このひと針のコダワリは今から全力で伝えていかなきゃいけない事だと…。
やっぱり同じ話に収束する。
「中道」だ。僕が目指す道は、ここにある。
既存のカテゴリーで戦うのだはなく、その間の、グレーのゾーンで存在を模索していく。そして新しい価値を提案して創造(想像)していく。
うん。
やっぱり楽しくなってきた。
素晴らしい時間をありがとうございましたっ!

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