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アメリカでの出産物語【中編】

公開日: : essay / エッセイ, 里央菜(りおな)




前編を書いてからもう一週間!?

ヘブライ語の授業以外、外に出る用事なんかなくて(それすら 単位を取らない公聴に変更したから毎回は行けてなくて)、実際に里央菜との散歩以外引き篭もってて毎日同じことの繰り返しのはずなのに、なにこの時の流れの感覚。不思議です。こうして書き出したら、また里央菜泣き出したし。ご飯の時間、マリナのお休みの時間です。

 

アメリカでの出産物語【前編】からの続きです。

 

 

24時間は覚悟してくださいね。からの……

 

leona-hospitalroom

 

 

心の準備もできてない状況で、半ばパニックになりながら到着した病院。僕が妙に興奮し、マリナは妙に冷静だったのを覚えています。

 

定期検診で産婦人科医が

あっ。あれっ?

っといった具合で始まった(始められた)破水。心の準備もできてませんでしたが、陣痛もなければ実際に破水の感覚もないマリナの身体も準備はできていない状況で。ここからInduction Labor(誘導分娩)が始まります。

 

感じのいい看護士さんが

子宮口、まだ1cmくらいしか開いてないから、長期戦を覚悟しなきゃかもね。一つずつやっていこうね。

っと優しい言葉をかけてくれて、まずはバルーンの挿入。

 

アメリカでの定番の誘導分娩は

「バルーン挿入→陣痛誘導剤→膣内のピル→」っと進んで行くようです。破水がきた以上、赤ちゃんには出てきてもらう気持ちになってもらわないと大変なので自然分娩を待つなどということは言ってられません。

 

子宮口に風船を入れて、そこに生理水を注入し物理的に広げるというもの。

英語での説明をふむふむと聞きながら頷いていると、次にPitocin(ポトシン – 陣痛誘導剤)の点滴も開始。徐々に量を増やして、17日早朝くらいのお産になるかもねっと簡単な見通しをもらって。

 

ここまでくると、僕にできることは何もなく。

マリナも風船突っ込まれて、赤ちゃんの心電図をお腹に、腕には陣痛誘導剤の点滴っと、完全に出産体勢が整ってるので、テレビをみることくらいしかなく。マリナの友達に連絡をしつつ、長丁場になる出産にむけて僕は一度家に戻ることに。愛猫のお世話の心配もあったし。

 

この時、お昼すぎ14:30頃。

仮眠を取って病院の面会時間の終わる夜10時には病院に戻る約束をして。面会時間内に病室に入って、そのまま一晩を一緒に過ごそうと思ったのです。仕事はない父親。できるだけ一緒に時間を過ごしたく。

 

 

これを虫の知らせというのか

家に戻って猫のお世話とか細々とした家事を終わらせたのが夕方16時頃。

 

マリナからの状況報告で、

なーんも変化なし!こりゃ長相場になりそう!

 

っというメッセージも入ってたから、数時間くらいの仮眠をしようとベッドに潜り込んで。

 

 

そうか……父親になるのか……とうとう。

とか感慨に耽りつつ、まだ見ぬ娘に想いを寄せながらゆっくりを微睡に……包まれず。

 

マリナと約束した10時までたっぷり5時間は眠れそうな時間があるのに、ジェットコースター的な1日で、しかもヘブライ語の勉強で前夜に睡眠不足だったから精神的にも体力的にも既に疲れているはずなのに、全く寝れないのです。

 

「寝れない時はゆっくりと目を瞑って気持ちを落ち着かせれば、睡眠と同じだけの効果がある」と信じつつ、目を閉じて猫を撫でながらひたすら目を閉じて10分。

 

もうね、居ても立っても居られないのですよ。いや、目を瞑ってても目を開けてても、「ベッドにいる場合じゃない」という気が抑えられなくて、病院にいるマリナに連絡。

 

予定よりも早いけれど病室行ってもいい?

隣で旦那がそわそわしているよりも、一人でゆっくりとテレビでも見て誘導陣痛が始まるのを待つ方がマリナ的には楽なんだろうなと思ってたので、できるだけ一人にしてあげたかったのです。マリナの性格的に、ずーっと横に僕がいて、逐一状況を見られるのも好まないだろうしっと。

 

でも、家で横になっていることすらできないのなら、もう病院行こうっと決めて。マリナから

いいよー。何もないから本くらいは持ってきた方がいいとは思うけれど。

っという返信を確認して、家には24時間帰らなくていいようにしっかりと準備をし、病院に向かったのです。この時、夕方17:30頃。

 

 

無痛分娩を希望したはずなのに。

 

こんな時に事故ったら話にならないっと、超安全運転で広大な病院の敷地内に入ったのが夕方18:30頃。

夕飯でも買ってこればよかったかなー。でもマリナ食べれないからその横で食べるのは申し訳ないしなー。

 

などとどうでもいいことを考えながら、病室に。

ノックして入ると、マリナがベッドの上で疼くまって苦しんでいる様子が目にはいって。

 

!?どうしたの!?!?

 

っと声をかけると、

ついさっきバルーンが抜け落ちて(子宮口が5cmくらいまで開いて)、それでやっと陣痛も始まって。ついさっきナースコールで、epidural(硬膜外麻酔)をお願いしたから、すぐに大丈夫にはなると思う。

 

おぉ。陣痛。

マリナは、長年のスポーツ選手人生で、腰に爆弾を抱えちゃっているからその心配もしつつ、無痛分娩が妊娠&出産の第一条件みたいなところもあったので、麻酔医が到着するのをひたすらに待って。

 

でもね……待てども待てども麻酔医&麻酔薬がこないのですよ。

事前の説明では、準備はできてるから、痛みが始まってから10分くらいで麻酔注射はできるからと言われていたのに、待てども待てども麻酔医がこない。その間に、マリナの陣痛の間隔はどんどん短くなっていって、あっという間に1分間隔に。

 

あまりの痛みに(相当痛いんだろうけれど男はわからない)、目がブチ切れた時の目になっているマリナ。半分僕のトラウマになっているその目に怯みつつ、ひたすら邪魔をしないように後ずさって。「背中を押されると楽」っというネットの情報を元にマリナに駆け寄ると、「触らないでっ」っと叫ばれる始末。もう、ひたすら距離を置くしかなく。

 

マリナは変な意味で日本人気質。とても気を使います。

というか東欧系のユダヤ人がそうなのか、めっちゃ人に気を配るのです。一生懸命働いている人の邪魔をしてまで自分の意見を押し通そうとはしない人。いやいや、お前が患者だろうというツッコミも理解できるけれど、相当控えめな正確なのです。少なくとも対外的には(笑)

 

その性格が影響したのか、麻酔医を待つ間、催促の電話とか入れないのです。

今に来る。今に来る。」っとずっと思ってたらしい。僕はもう何がなんだかわからずに、ひたすら壁のそばでうろうろおたおた。

 

すると感じの良い優しい看護師さんが部屋にチェックにきてくれまして。

 

えっ?もうそんなに痛いの??なんで麻酔入れないの???

 

 

……今日はプロ(医者とか看護師)にびっくりされることが多いなぁと思いつつ、事情を説明。もうすでに30分前にも麻酔をお願いしたと。で、待っていると。看護婦さん、確認してすぐに手配するとは言ってたけど、話の流れ的にあれはオーダー通ってなかったなぁと思います。

レストランで30分ご飯待たされるのもイライラするけれど、病院で麻酔薬30分待たされるって……(笑)

 

麻酔=リラックス?

この看護師さんはとてもお仕事が早く、しかも的確、さらに優しさを兼ね揃えているという、日ハムの大谷くんの様な素晴らしい(使える)プロの方で、麻酔医に直接電話するのと同時に、マリナと一緒にいてくれることに。

 

1分置きの陣痛と、マリナの必死の形相にひたすら狼狽えるだけの僕に対して、

「旦那さん、壁と同化はできないからね(笑)怖くないし。」

っと冗談を入れてくれるほど。僕の母親も、マリナの両親も10,000KM以上離れた場所にいて二人っきりで乗り越えなきゃと思ってた時に、こういう存在は本当にありがたかったです。

 

さて麻酔。

看護師さんからの連絡からすぐに麻酔医がかけつけてくれて、テキパキと麻酔の説明。硬膜外麻酔は全く副作用がないわけじゃないから、その副作用の説明と、「母親自身が希望して麻酔をする」という最終確認。僕はおたおた(笑)病室内にいる全ての人にマスクが配られます(細菌が入り込むのを防ぐためって説明がありました。)

 

その間も1分より短い間隔での陣痛は続いているのです。

硬膜外麻酔は背骨の骨髄に入れていきます。カテーテルを入れてからの点滴になります。が、背骨に注射のする瞬間にも陣痛が来る可能性もあって。陣痛と陣痛の間に、サクっとすませちゃうあたり、プロはすごいなぁと思って。怖い仕事だと思うのだけれど。

 

ありがたいことに硬膜外麻酔は、じわじわと、でも確実に効いてきてくれて、マリナの陣痛の痛みも少し和らいできて、やっと話せる状態に。その恐ろしい痛みの話に対して笑顔も見せれるようになったマリナが、ふと顔を歪めだしたのです。

 

麻酔薬を入れて20分後くらい経った頃、ちょうど看護師さんが所用で部屋を離れていた10分間ほど、麻酔が入っているのにも関わらず、相当の痛みをマリナが感じるようになっていたのです。麻酔医から教えられていた点滴の量を増やすボタンも押し続けて、それでも痛い。麻酔薬へのナースコールをしようとした時に、天使の様なあの看護師さん(定年間近って言ってた)が戻ってきてくれて。

 

麻酔効いてない?そんなに痛い??ちょっとだけ子宮腔確認しようか。

 

子宮腔がどれだけ開いているかは定期的に確認する必要があるらしく、麻酔が効いてないわけもなく、麻酔医に連絡するのと同時に子宮腔を確認する作業へ。

 

ちなみに、

パパはママの手をしっかり握って

とか

陣痛時、パパはママの背中を押してあげて

とかっていう日本の出産準備情報を頭にしっかりインプットしていたのだけれど、

 

実際は、

 

手を握られるとコントロール不能な感じがするから手は握らないで!

とか

陣痛時は痛くてなんでもいいから殴りたくなるから近寄らないで!

っと男らしいコメントをマリナから頂いて、僕は部屋の隅っこでニコニコしていました。ニコニコしてるしかないよ、こういう状況って。

 

 

子宮腔を確認しようと手を膣に入れた看護師さんが一言。

 

ありゃ!もう頭がそこまで出てきてるわ。(Oh, I can feel her head right here).」

と一言。

 

俺とマリナは!?っとなって次の看護師さんのコメントを待ちます。人間本当にびっくりすると言葉は出ません。

 

よし、産んじゃうよ!いきんでね!!

と看護師さん。

 

俺とマリナ

今ですか?今の今?もう少し待つとかなくて??

 

今よー。もう出てきちゃってるもん。パパ、こっちきてママの左足持って支えてあげて!!

 

事前にマリナは、僕が出産の一部始終を見ることは希望してませんでした。

僕は同じ部屋にいて、でもマリナの側に立って、マリナ目線から里央菜の誕生を見守ることを希望していたのです。それが、看護師さんとか側に立って里央菜がマリナから生まれてくる瞬間を逐一応援することに。普段だったらぎゃーぎゃーいうマリナですが、ここまでくるとコントロールできません。

 

いきみ、休憩。

痛み(麻酔は効いてるから楽な方だったらしい)と疲れ。

マリナに変われるものなら変わってあげたかったけれど、僕が男である事実は変わりようがなく、そこでグダグダ思っても仕方ない。必死の祈りです。

 

結果、少しずつでも確実にこの世に生まれようとする里央菜を確認できてよかったと思っています。

 

あら〜〜。もうパパの髪の毛、持ってるんだねー。

っと、里央菜が出てくる途中経過にコメントを挟んでくれたり、逐一マリナの状況を鑑みつつアドバイスやコメントをくれた看護師さんには感謝しても感謝しきれません。

 

私、今日は夜の11時までのシフトだから、きっと里央菜ちゃんは私に取り上げて欲しかったのかもね。

っと笑ってましたが、僕が里央菜の立場でも、きっとこの看護師さんを選んでいたと思います(笑)。それだけ素晴らしい看護師さん。

 

 

40分くらいのマリナの頑張りの後、里央菜が夜10時ちょうどにこの世に生まれる事になるのです。

 

里央菜とのご対面

 

予想よりも長くなってしまったので、ここからは後編にまとめます。

完結させられなくてごめんなさい……。書きたいことがたーくさん。

 

 

 

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