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H-4 で 働く & 働きたい!

公開日: : 最終更新日:2015/07/19 アメリカ生活, ビザ関連のお話




 

マリナの出産からの怒涛の育児で、長年見守ってきたアメリカのある法改正のことをすっかり忘れていて、今年の2月に決定、そして今年の5月から改正案が適応されるというニュースを最近知りまして。いやはや、同じ環境で法改正を望んでいた人たちのことを(ウェブ上ながら)知っているので、この嘆願が形になって本当に嬉しいです。

Petition Summary(嘆願のまとめ)

https://petitions.whitehouse.gov/petition/allow-h-4-visa-member-work-legally

 

H-4 ビザでも働けるかも!

*条件を満たす必要があります。

 

どんな法改正だったのか……というと、アメリカの移民法の一部である、「外国人労働者の配偶者に対する労働許可の制限」についての法改正でした。当事者にならないと分からない&あまり知られてすらいない法律なのですが、ここまで僕自身が調べてきたり悩んできたりしたことでもあるので、今後H-4というカテゴリーでアメリカに滞在する方への参考になればと思い、文章に残します。

 

H-4 ビザについて

 

H-4 ビザとは、簡潔に言うと「アメリカにて労働をしている外国人の配偶者がアメリカに滞在する為のビザ」です。

「アメリカンドリーム」と聞いてもピンとこない人も多いとは思いますが(僕もピンとこない一人)、それでもアメリカで職に就き、生活を築き上げていくことを望む、アメリカ市民以外(外国人)は多いのです。

 

アメリカに滞在するビザは様々な種類がありますが、雇用を得て(仕事を通して)アメリカに滞在する一番一般的なビザが、H-1Bと呼ばれる労働ビザだと思います。年間何十万人もの人がこのビザを取得更新し、アメリカに滞在しています。

*逆に言えば、たった何十万人しか取得できていない現実もあります。

 

H-1Bでアメリカに滞在する場合は、外国人(Alien – エイリアン)とカテゴリー分けされ、アメリカ市民が持つ権利(投票権等)は与えられません。アメリカで雇用主の為に働き滞在する許可がH-1Bです。その為、H-1Bでの副業は禁止されています。また、継続してアメリカに滞在する意図があるのであれば、「永住権(グリーンカード)」を申請しなければならず、H-1Bの期間は上限6年までとなっています。

 

H-1Bで働いている外国人は若い人が多いですが、独身だけとは限りません。そして結婚していたり家族がいたりする場合、H-1Bの家族にもアメリカ滞在を許可するビザが必要です。それが H-4 ビザなのです。

 

H-4 ビザホルダーには、基本的にはH-1Bホルダーと同じ権利が与えられます。

アメリカへの出入国は自由ですし、H-1Bの有効期限ないであればずーっとアメリカに滞在することができます。また学校(大学)にいく為に取得する必要がある学生ビザ(Fビザ)を取得する必要はありませんし、ボランティア等の社会活動にも参加できます。

ただ、労働(時間や労力の対価としてお金を得ること)は許可されていません。

 

H-4 ビザの背景と、法改正の背景

 

米国移民局にとっての大きな仕事の一つとして、「母国民の雇用を守る」というものがあります。

労働賃金の比較的安い国々から移民が流れ込んできた場合、労働への賃金体系が崩壊しますし、米国民ができる仕事を外国人が行ってしまうと、それだけ国内の失業率も上がり、国として機能しなくなってしまいます。

 

そこで、「労働者の配偶者」という微妙な立ち位置にいる人には、労働許可が下りずにいました。このH-4ホルダーに労働許可を下ろしてしまうと、H-1Bの存在意義が薄れますし、もっと言えば、賃金体系が壊れるきっかけにすらなると心配したのかもしれません。

 

実際、僕が出会ってきたH-4 ホルダーは、「配偶者よりは労働希少価値が低い」人が多いです。勘違いして欲しくないのは、「仕事ができる人が少ない」と言っているのではなく、「特定の労働市場における価値が低い」という意味で、労働市場における価値が高い人とは、博士号を持っていたり、それなりに特殊な技能(寿司職人等)を持っている人という意味です。

 

僕もそのうちの一人です。

世界のどこででも食べていける(職を得る)自信はありますが、嫁が博士号を取得し臨床心理士という仕事をしている以上、その嫁の配偶者としてアメリカに滞在した方が「より良い」生活ができると判断して、H-4 という働ない状況に身を置くことを決断しました。実際、労働市場での価値が高い人は、それなりに収入も高いですしね。僕自身も、嫁の収入が僕の見込み収入を超えた時に、最終的な判断をしました。(もっと他にも判断材料はありましたが)

* H-1Bの発行数が限られている為、学歴が高い(博士号→修士→学部卒)申請者にH-1Bが優先的に降りる仕組みになっています。今、学部卒で卒業してもきっとH-1Bを取るのはとても難しいんじゃないかな。

 

とはいえ、繰り返しますが、H-4 を持っている方が”デキナイ人”では決してありません。

奥様とイギリスのケンブリッジで知り合い、奥様が博士号を、旦那様が修士号を取って、アメリカの田舎町の大学に奥さんが教授として赴任したけれど、H-4で働けないっと言った方もいました。

 

そんな「ビザの都合で働けない」という状況も、数年であれば、嘆願書を大統領に出すまでには発展しなかったのかもしれません。(とはいえ、僕は相当苦しんできましたし、今でもそれなりに苦しんでますが。子供ができて少しは紛れてるとはいえ、働ないっていうのはキツイです。)

 

法改正が行われるまで発展した背景には、永住権(グリーンカード)を申請する際に発生してしまう歪みに問題があったからです。

 

順番待ちが長すぎる

 

永住権を得るということは、アメリカ市民になる権利を得るということでもあります。

米国移民局は、できる限りアメリカ国内のDiversity(民族の多様化)を重視し、一定の民族だけがアメリカ国民の比率を超えないように、永住権の付与等を通してコントロールしようとしています。グリーンカードには抽選がありますが、これの名前が、「Diversity Program」とそのままで、この抽選の権利すら与えられない国があるのです。

現時点でアメリカには、日本人系のアメリカ人が少ないからか、グリーンカードの抽選もありますし、コントロールの対象にもなっていません。この対象となっている有名な国は、中国とインドでしょうか。

 

「H-1Bを通してアメリカで6年働き、その間に永住権を申請する」

という正規のプロセスを通っても、アメリカ国内に同じ民族(国の出身者)が多い場合、永住権の発行を延期されるのです。僕はこれを単純に”順番待ち”と呼んでいます。例えばですが、中国本土出身者の方でH-1Bを通した永住権申請者の待ち時間は、およそ11年です。2004年6月1日に申請を開始した人が、今審査を受けられるのです。

 

その間、”順番待ち状態”として、H-1Bと同様の滞在ビザは発行されるようですが、逆に言えば、配偶者はずっとH-4ビザで働ない状況が10年もの間続くということなのです。

 

これは本当にキツイ話だと思うのです。

まず本人の精神的にキツイ。いくら子育てがあったり、社会参加の方法(ボランティア等)があるとはいえ、10年もの間「働く権利がない」という状況が続くのは本当にキツイと思います。

そして金銭的な問題。

10年も同じ国に滞在していれば生活スタイルも変化してきます。家族が増える場合もあるでしょうし、病気になるかもしれない。10年というのはとても長い期間です。

 

そんなH-4の人達への対処策として、長年望まれていた法改正ができたのでした。

 

 

H-4 で労働許可書を取得するためには

 

上記で簡単に触れましたが、この法改正の発端はH-4ホルダーからの嘆願です。(少なくとも僕はそう理解してます。)

その為、H-4ホルダーが労働許可書(EAD – Employment Authorization Document)を申請取得する為には、一定の条件が付加されています。全てのH-4 ホルダーが労働許可書を得られる訳ではないところが残念です。僕もH-4ホルダーですが、まだ労働許可書を申請する段階にはありません。残念。

 

「旦那が(妻が)アメリカで就職できて、一緒にアメリカで生活するから、私も仕事したい!」

っていう理想が叶う世の中になればいいなぁとは思います。共働きが当たり前の時代ですしね。H-4 に労働許可が付随してくれればいいのですが、それは先の話になるのかもしれません。

 

でも、これは大きな一歩です。

では簡単ではありますが、H-4ホルダーが労働許可書を申請できる条件を説明します。

A. 1-140の審査が終わっている場合

 

永住権の申請プロセスは大きくわけて、以下の三つに分けられます(時系列順)

  1. PERM / Labor Certification
  2. I-140
  3. I-485

 

上記で説明した”順番待ち”状態になるのは、I-485という、「永住権というビザに書き換えますよ」っという書類手続きの段階です。逆に言えば、2番のプロセスの、I-140(永住権申請の資格があるかどうかの審査)までは、出身国に関係なく行うことができます。

この I-140の審査をクリアした人、つまりは永住権の申請資格が認められた人の配偶者は、労働許可書を申請できますよ!という法改正です。

 

B. H-1Bが本来持つ6年間の制限を一定の理由で延長した状況にある場合

 

説明の都合上、めちゃくちゃさらっと書いていますが、このI-140の審査に辿り着くのですら、多くの永住権申請者にとっては長く苦しいものです。僕らもまだ I-140の審査にすら辿り着けていません。妻はもう5年もアメリカに滞在しているのに、です。

というのも、上記に書いたPERMという手続きがめちゃくちゃ大変なのですが、そのPERMに必要な書類を出した段階で、米国移民局は「当人は永住権を申請する意図がある」と理解し、条件を満たした上で、H-1Bが本来持つ6年間の制限を伸ばしてくれるのです。それでも、1年ごとの更新だったような気がします(未確認)。

この延長申請が許可された場合は、その家族が永住権を申請する意図があると見做して、その配偶者にもH-4ビザを出そうという法改正です。これで、諸事情で第一段階すら突破できず大変な思いをしている家族の人も労働許可書が得られる可能性があるのです。

 

 

 

以上、簡単に纏めました。

ここに書いたことは、全てアメリカ移民局、及び関連のウェブを読んで得た知識です。リンクも貼っておきますが、私はあくまで素人なので、間違いがあるかもしれません。また、最終的な責任は私では持てないので、移民専門の弁護士に尋ねられることを強くオススメします。安くない費用が必要ですが、僕らもそうしています。人生が決まる話ですからね。

 

http://www.uscis.gov/working-united-states/temporary-workers/faqs-employment-authorization-certain-h-4-dependent-spouses

 

http://www.immihelp.com/h4-visa-ead/faq.html

 

 

働けない苦しさは、マジで半端ない

 

最後に個人的な思いを……。

 

このブログで度々書いてきましたが、「強制的に働けない」という状況は、思った以上にキツいです。

希望する職種があっても、「H-1Bの発行制限があるから」と労働許可がないばかりに、就職ができなかったのは1回や2回ではありません。アルバイトすらできないのです。その度に悔しい思いをしたり、自分の能力が無いわけではないのに自分を卑下したりしていました。

収入が全てとは言いませんが、無収入がずーっと続くと、自信が持てなくなったり、精神的に追い詰められたりしてしまいます。

 

「働かなくていいなんて幸せじゃん。」

っと言われたこともありますが、働くことによって得られる社会との繋がりが持てない場合、人はどんどん孤立への道を歩んでいってしまうのだと思い知らされました。「ボランティアでもいいじゃん」っと言う人もいましたが、ボランティアはあくまで数ある選択肢の一つであるべきで、残された選択肢の一つであってはいけないことも実感しました。

 

 

 

投資家や起業家としてビザを取る方法も考えましたが、あまりにも規模が足りず、それも断念しました。

2014年の前半は本当に苦しい日々でした。日々悩み、日々調べ、日々なんとか解決できないかと足掻いている中得た知識を、今回文章にしてみました。

 

2014年の夏に嫁が安定期に入り、そこからは子育て専業主夫として腹を括った感はあるのですが、それでも今の「H-4で働けない状態」に満足しているわけではありません。とはいえ、まだ生後4ヶ月の娘を託児所に預けてまで就職したい会社は近くにはないですが(笑)

娘が生まれる前は、子育ての知識のインプットや、多言語育児に必要な嫁側の言語(ヘブライ語&ロシア語)の勉強に存在意義とやりがいを見出し、実際に生まれてからは、日々の変化と対応にバタバタ追われて、「働けないこと」への悩みは薄れてしまっていましたが、こうして文章にできて良かったと思っています。

 

H-4でアメリカに滞在している人は少なくないはずです。

それでも、なかなか問題が表面化しなかったのは、「諦め」や「主となるH-1Bホルダーに迷惑をかけたくない」という気持ちがあるのかもしれません。僕も嫁に迷惑がかかることは一切したくなかったですし、もっと言えば日本人のように”順番待ち”がない国出身者の場合、6年という上限があるので、待つことが正解なんだとすら思っていました。

 

だからといって、H-4での苦しみが和らぐわけでもなく、楽になるわけでもありません。

そういう人たちとブログを通してでも繋がっていけたらなぁと思って、以前記事を書いたのを思い出しました。同じ内容で今も記事を書き続けていることを嬉しく思いつつ、これからも続けていけたらと思っています。子育てブログになっていますが、アメリカへの移民を含めての子育てだと思っているし、このブログは僕個人の人生のアーカイブであればと思っているので。

 

ずっと待ち続けた、”順番待ち中”のH-4ホルダーの人たち、おめでとうございます!

それ以外の、アメリカ中のH-4ホルダーの人々にも、素晴らしい未来が訪れますように!

 

 

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